新渡戸氏の歴史

新渡戸氏に代々伝わる系図『新渡戸氏系譜』によると、新渡戸氏は千葉氏の流れでそのはじまりは鎌倉時代初めという。ここでは三本木原開拓に関わる以前の新渡戸氏の足跡や、五千円札肖像の新渡戸稲造をはじめ、様々な業績をのこした新渡戸家の人々にスポットをあて紹介する。

新渡戸氏のルーツ「新渡戸駅」

新渡戸氏に代々伝わる『新渡戸氏系譜』によると、新渡戸氏は千葉氏の流れでそのルーツは約800年まえにさかのぼる。文治5(1189)年奥州藤原泰衡征伐の際、千葉常胤は東海道(現・常磐線)軍の大将として一族、下総、常陸の武士を従えていた。この時、下野国「新渡戸」の駅において泰衡の刺客遠田三郎を常胤の孫・常秀が誅し、その功により源頼朝より下野国新渡戸、高岡、青谷の三郷を賜わった。後に戦も終り常秀から五代後の貞綱の時新渡戸の郷に居城し、その地にちなんで姓を一時千葉から新渡戸と名乗り、さらに六代後の信盛の時から正式に新渡戸と改めたという。 現在栃木県内に「新渡戸」の地名は残っていないが、旧新渡戸駅といわれている場所がいくつかある。

栃木県内の旧新渡戸駅といわれている場所

那須町芋淵周辺 
『那須郡誌』の著者・蓮實長氏は、那須町伊王野の正福寺に伝わる“わに口”に「伊王野村丹渡度…応永年(1399年)」と記されており、「丹渡度」はもと「丹渡戸」と書き“にわたど”と読むことなどから、「丹渡戸」は「新渡戸」の地名が長い間に変化したものだとしている。そして「丹渡戸」も「新渡戸」同様、現在は地名として残っていないが那須町の芋淵周辺を指すのではないかとしている。

黒磯市杉渡土
『大日本地名辞書』の著者・吉田東伍氏は那須町の「杉渡土」をもとは「杉渡戸」と書いた事や、鎌倉幕府の年代記『吾妻鏡』の奥州征伐についての記述に「文治五年七月二六日、宇都宮を立たせしめ給う。二八日、新渡戸駅に着く。二九日、白河関を越える。」とあることから、位置的に考えて、「杉渡土」が「新渡戸駅」ではないかとしている。黒羽町寒井付近 『那須町史』ではほかの2説よりさらに4㎞ほど南下した黒羽町「寒井」付近が「新渡戸駅」ではないかという説をあげてる。

二宮町水戸部
『新渡戸氏系譜』の記載によると、文治5年に千葉常秀が頼朝から賜ったのは下野国の新渡戸・高岡・青谷三郷だが、現在栃木県真岡市内に高岡と青谷の集落が隣接する場所がある。そして、高岡の隣に新渡戸と読みが一字違いの「水戸部」という集落があることから、この水戸部が旧新渡戸駅ではないかとの説もある。ここには新渡戸稲造博士も大正4(1915)年に真岡で講演の折り立ち寄り、先祖について調査している。

慶長三年より南部公につかえ安野村に住む

新渡戸内膳正春治は慶長3(1598)年父胤重の命により、始めて南部利直公に謁えた。公は大変喜ばれ年200俵を賜わり、以来安野村(現花巻市高松・矢沢)に居住し、家臣となった。
その後、和賀・稗貫・温礫・遠野・釜石・大槌の戦に遠征し功あり、慶長15(1610)年南部利直公より藤根村に200石を賜わる。南部藩と伊達藩の境界紛争の時も大功があり、又、良く安野村を治め民心を安定した。寛永13(1636)年12月18日逝去し、この地の「檀那の前」(居住地の前)に葬られたという。その墓石と伝えられる石が残っており、現在はこの石の前に新渡戸家一族と旧新渡戸氏知行地・中野村、安野村の人々の協力により、昭和49(1974)年に建立された「新渡戸春治記念碑」がある。

新渡戸の家紋

月星 新渡戸氏の源流、千葉氏は桓武天皇第五皇子・葛原親王(延暦年間)を祖としているが、葛原親王は常に北斗妙見を厚く信仰し、お堂を建てまつっていた。その子高見王(大同年間)もまた、父と同じく信仰し、北斗妙見の霊験があったという。以来、月星を家紋として後世に伝え、千葉氏の流れをもつ家は多くがこの月星をもちいており、新渡戸氏もその一つである。これは男紋で、新渡戸家の男子のみが使用する。
四つ七宝 南部家より頂いたもので、裏紋として女紋に使用する。宝珠武田菱ともいう。武田菱は源義光系。甲州源氏の通紋で、南部家でもこれを用いた。新渡戸家が南部家に重用され、南部公の側室も出ている事もあり、この紋を使用している。
竹輪に十五枚笹 新渡戸常信(?~1449年)は鎌倉将軍足利持氏と親しくなり、将軍と昵懇だった朝倉掃部頭邦景とも懇意となって、京に至り西の嵯峨に数年間住居した。その子信盛の時代に京都から旧来の領地・下野国新渡戸に帰る際、朝倉掃部頭邦景は別れを惜しみ、朝倉家の家紋・竹輪に15枚笹の紋のついた旗をくれた。これより新渡戸家では代々竹輪に15枚笹を旗、幕用の家紋としている。
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